出版社名:ニューズピックス
著者名:ピーター ディアマンディス(著)/スティーブン コトラー(著)
発行年月日:2020/12/22
ページ数:445ページ
評価:
2020年から2030年までの10年間、変化のスピードは加速する。
進化するテクノロジー同士が融合する「コンバージェンス」により、テクノロジーは加速度的に進歩するからだ。
コンバージェンスは破壊的なイノベーションをもたらし、社会を大きく変えていく。
本書では実際に実現されている最新のテクノロジーを紹介し、それぞれが掛け合わされることによってどのような「加速」がおこるのか、創造的かつ具体的に記載されている。
技術者としてはワクワクせざるを得ない内容だが、どのような事が記載されているのか? 信憑性はあるのか?
私見も織り込みつつ紹介していきたい。
ちょい得情報
目次
本書の感想(ネタばれあり)
1:「加速」は複数技術のコンバージェンス(融合)で発生している。
複数技術とは何があるの? 具体的には下記のような技術が急速に発展している。
プロックチェーン、AI、3Dプリンター、Augmented Reality、Virtual Reality、バイオテクノロジー、 ナノテクノロジー、材料科学、 量子コンピューティング
2:車の未来はどのような姿になるのか?本当に空を飛ぶのか?
日本では出前&宅配で有名なウーバーは、世界では自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリの企業である。
同社は「2023年にはダラスとロサンゼルスで空のライドシェアを完全に事業化することが目標」 と発表している。3年後には空飛ぶ車が見れる可能性は高い。
ミレニアム世代の10%がライドシェアを選択。コスト面ではライドシェアしか勝たない。
現状、車の平均使用率は5%。自動運転・シェアが進むにつれて新車ニーズは大幅に減るだろう。
3:大都市間の移動はハイパーループ
日本での大都市間の移動といえば新幹線が一般的。リニアモータカーなども検討されている。
しかし、世界に目を向けると、ハイパーループが注目されている。
ハイパーループとは、イーロン・マスクが2013年8月に発表した次世代型超高速輸送システム。真空状態のチューブ内を空中浮上した列車が走行することで、摩擦抵抗や空気抵抗を最小限に抑え、既存の高速鉄道や旅客機よりも高速に移動できる。
2020年11月には韓国で1000km/時達成。アメリカでは有人走行達成。
4:加速が進んでしまうと、既存の企業はついていけるの?
そんなに急速に技術革新が進んだ世の中で、既存の企業は対応できるのか?
エール大学のリチャード・フォスターは
「フォーチュン500企業の40%は、10年後には聞いた事もないベンチャーに置き換わるだろう。既存の大手企業や政府機関は、安全と安定の構築を目的に、過去の世紀に作られている。加速する進化について行けるわけは無く、既存企業は消滅するだろう」
との見解。
俗に言う大企業病を患う会社などは変革なくして生き残れない時代になるだろう。
5:移動手段はどのように変化するのか
では移動手段はどのように変化するのか?そもそも移動しない。 が最終到着地点。
- 車の所有
- ライドシェアモデル
- 自動運転車
- 空飛ぶ車
- ハイパーループー
- アバターのみ移動
ここ10年に猛烈なスピードで変わるだろう。
6:製造業はどのように変化するのか
3Dプリンターは、既に元素周期表をほぼ制覇している。
細胞、皮革、チョコレート、太陽光発電基盤などが、家庭用の3Dプリンターで製造される日も遠くない。
製造業の在り方も変わってくるかもしれないし、移動の物販の概念も変わってきそう。
7:企業はどのように生き残ればよいのか
企業はどのように生き残り戦略を取ればよいのか。
ハーバード大学クレイトン·クリステンセン教授
「新しいテクノロジーや製品を開発する事が 成長のカギではない。
このようなイノベーションを新たなビジネスモデルの中に埋め込む必要がある」
と述べている。
商品開発をするだけではなく、どのように売り込むのかビジネスモデルの変化を作り上げる必要がある。
ゆくゆくは、Jarvis(家庭用人工知能)が、市場の様々の商品を分析し、最適な物を購入してくれる時代がくる。
その中で、広告など意味のなくなる世の中がくるのかもしれない。
8:ヒューマンマシンインターフェースの変化
ARスカウター・ARコンタクトレンズなど、ディスプレイは現実世界に統合される時代がくる。
すれ違う人々の、インスタフォロー数やプライベート情報など瞬時に表示されるかもしれない。
プレインコンピュータインターフェース (BCI)も着々と進んでいる。つまりは人間のアップデートだ。
- 2014年:プレインtoプレインコミュニケーション
- 2016年:EEGヘッドセットでテレパシービデオゲーム
- 2018年:考えるだけでドローンを操作
その搭載方法も技術進化が止まらない。
頭に載せるタイプ(情報不足が課題だった)
埋め込むタイプ(健康リスクが課題だった)
最新は、注入タイプのニューラル・レース による発展が期待されている。
9:ドメスティックな情報だけでは危険
日本人は独自の言語を使用するため、世界の情報から隔離される危険がある。
日本の常識と世界の常識がずれている可能性も認識する必要あり。
例えば、ハイバーループは日本企業が関わらないので情報が少ない。
富獄などは海外ではさほど重要視されていない。量子コンピューティングに目が向いている。
サイト翻訳がさらに進み、ボーダレスな情報のやり取りができるようになった時、驚かないように備えておきたい。
まとめ
本当ですか?と疑いたくなるような技術革新が多いが、ある程度実例を挙げながら説明されている為、信憑性がある。
ピーターディアマンディスは、Xプライズ財団CEO。シンギュラリティ大学創設者。分子生物学と航空工学と医学の学位を取得。
この人だからこそ書ける、複数分野を融合させた書物に仕上がっている。
私の感想では描き切れていないところも多数あるので、技術者に限らず会社経営の方など、事業の舵取りをする方は読んで危機感を感じていただきたい。